1971年に公開された「時計じかけのオレンジ」は、映画監督スタンリー・キューブリックが手がけた異色の作品です。
原作は、1962年に発表されたアンソニー・バージェスの小説で、舞台は近未来のイギリス社会。
そこでは、暴力と実験的な更生手段が中心的なテーマとして描かれています。
物語の主人公は、若者アレックス(演じるのはマルコム・マクダウェル)。
彼は仲間とともに凶悪な犯罪行為を繰り返しますが、やがて逮捕され、ある特殊な治療を受けることになります。
その名は「ルドヴィコ療法」。
人間の行動を強制的に矯正しようとするこの治療法は、自由意志とは何か、そして社会秩序とはどうあるべきかという、深い問いを観客に投げかけます。
公開当時、この映画は過激な暴力描写のために激しい議論を呼びました。
イギリスでは一時的に上映が禁止されるなど、大きな波紋を広げました。
それでも時間が経つにつれて再評価され、今では映画史に名を刻む名作として高く評価されています。
たとえば、2012年に英国映画協会が行った「世界の偉大な映画」投票では、映画監督による投票で75位、批評家による投票で235位に選ばれています。
また、2020年にはアメリカの国立フィルム登録簿に「文化的、歴史的、または芸術的に重要な作品」として登録されました。
キューブリックといえば、緻密な構成と徹底したこだわりで知られていますが、この作品は例外的に短期間で完成しています。
撮影は1970年9月頃にはじまり、わずか半年ほどで翌1971年4月に劇場公開されました。
そのスピードは、キューブリック作品としては異例です。
映像表現の美しさと鋭い社会風刺。
この二つをあわせ持つ「時計じかけのオレンジ」は、今なお多くの映画ファンや批評家を魅了し続けています。
この記事では、映画「時計仕掛けのオレンジ」のキャスト情報やあらすじ、監督・スタッフの背景、さらには実際に視聴した人の感想まで、視聴前に知っておきたい情報をまとめています。
映画「時計仕掛けのオレンジ」の基本情報

公開日 | 1971年12月19日(ニューヨーク)、1972年1月13日(イギリス) |
監督 | スタンリー・キューブリック |
原作 | アンソニー・バージェス「時計仕掛けのオレンジ」(1962年) |
脚本 | スタンリー・キューブリック |
主要キャスト | マルコム・マクダウェル(アレックス・デラージ役)、パトリック・マギー(フランク・アレクサンダー役)、マイケル・ベイツ(チーフガード・バーンズ役)、ウォーレン・クラーク(ディム役) |
ジャンル | ディストピア/犯罪映画 |
上映時間 | 136分 |
配給会社 | ワーナー・ブラザース |
受賞歴 | 第44回アカデミー賞4部門ノミネート(作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞) |
映画「時計仕掛けのオレンジ」のあらすじ
映画「時計じかけのオレンジ」の舞台は、近未来の荒廃したイギリス社会。
物語の主人公は、アレックス・デラージという若者です。
彼はクラシック音楽、とくにベートーヴェンを愛する一方で、極端に暴力的な行為に快感を覚えるという、二面性を持った人物です。
アレックスは、自ら「ドルーグ」と呼ぶ仲間たちとつるみながら、夜な夜な町へ繰り出します。
無差別に人々を襲い、家に押し入っては、凶悪な犯行を繰り返します。
しかしある夜、仲間たちに裏切られたアレックスは警察に逮捕され、刑務所に送られます。
そこから彼の人生は大きく変わっていきます。
政府の新たな更生実験に志願したアレックスは、「ルドヴィコ療法」と呼ばれる心理的な矯正手法を受けることになります。
この療法は、暴力的な映像を薬物投与とともに強制的に見せられ、暴力に対して強い嫌悪感を抱くように仕向けるというもの。
結果として、彼は暴力を振るうことが出来なくなりますが、その代償として愛していたベートーヴェンの音楽さえも聴けなくなってしまいます。
「治った」とされて社会に戻されたアレックスは、思いもよらぬ形でかつての報いを受けていきます。
被害者たちや裏切った仲間に復讐され、やがて精神的に追い詰められていきます。
自ら命を絶とうとするほどに。
物語はアレックスの語り口で進みますが、その中で彼が使う言葉「ナドサット」にも注目です。
これはロシア語、英語、そしてロンドンの俗語などが混ざった独自の若者言葉で、作品独自の世界観をより印象的にしています。
映画「時計仕掛けのオレンジ」のキャスト・キャラクター紹介
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マルコム・マクダウェル(アレックス・デラージ役)
物語の主人公アレックスを演じるのは、マルコム・マクダウェルです。
アレックスはクラシック音楽、とくにベートーヴェンを愛する一方で、極端な暴力行為に快感を覚えるという、複雑で矛盾した人物です。
監督のキューブリックは、1968年の映画「If….」でのマクダウェルの演技に惚れ込み、本作への起用を決めたといわれています。
その理由を問われた際には、「君は画面の中で知性をにじませることができる」と語ったとも伝えられています。
衣装にもマクダウェルの提案が生かされています。
彼が私物のクリケット用の白い服を見せたところ、キューブリックは気に入り、股間当て(ボックス)を服の外につけるように指示したそうです。
パトリック・マギー(フランク・アレクサンダー役)
作家フランク・アレクサンダーを演じたのは、パトリック・マギーです。
彼は物語前半でアレックスたちに襲われ、妻を暴行されたうえに自らも重傷を負います。
そして後半では、その過去を思い出し、アレックスへの復讐を画策する重要な役どころとなります。
マイケル・ベイツ(バーンズ主任看守役)
刑務所でアレックスを管理する主任看守を演じたのがマイケル・ベイツです。
冷たく厳しい態度で接する姿が、矯正施設の非人間性を象徴しています。
ウォーレン・クラーク(ディム役)
アレックスの仲間「ドルーグ」のひとりであるディムを演じています。
粗暴で単純な性格のディムは、物語中盤でアレックスを裏切り、のちに警察官として彼を追い詰める存在となります。
ジェームズ・マーカス(ジョージ役)
アレックスのグループの一員で、リーダーの座を巡ってアレックスに反抗するのがジョージです。
最終的には彼もアレックスを裏切る側にまわります。
マイケル・ターン(ピート役)
同じくアレックスの仲間であるピートは、他の仲間に比べておとなしい性格の持ち主です。
暴力に対する姿勢もやや控えめで、グループの中でも目立たない存在として描かれています。
ミリアム・カーリン(「キャットレディ」ウェザーズ役)
大量の猫とともに暮らす女性、「キャットレディ」を演じたのがミリアム・カーリンです。
アレックスによって襲撃され、命を落とすという衝撃的なシーンで登場します。
映画「時計仕掛けのオレンジ」の監督・制作チームの紹介

「時計じかけのオレンジ」の監督を務めたのは、アメリカ出身の巨匠スタンリー・キューブリック(1928年7月26日〜1999年3月7日)です。
彼は映画監督/脚本家/製作者/写真家としても知られ、映画史に残る名作を数多く世に送り出しました。
その徹底した完璧主義と革新的な映像表現は、いまなお世界中の映画人に大きな影響を与えています。
キューブリックは、それまでの大作「2001年宇宙の旅」の完成後、より手頃な予算で短期間に撮影できる企画を求めていました。
そんなとき、かつて「博士の異常な愛情」の制作中に脚本家テリー・サザーンから渡されていた小説「時計じかけのオレンジ」を再び手に取ります。
当初は、作中に登場する造語「ナドサット」があまりにも難解だとして一度は断念したそうですが、1969年末になって本格的に制作を決断しました。
当時の社会では、若者の性や暴力、反抗心をテーマとした映画が注目されていて、キューブリックもそうした時代背景を意識して本作に取り組みました。
撮影は1970年から1971年にかけて行われ、予算は約200万ポンドという、当時としては比較的抑えられた規模でした。
映像面では、シネマスコープ(横長の画面比)を用いず、代わりに1.66対1という画面比率を採用しています。
この選択は、広がりのある映像と人物の親密な描写のバランスを取るための「ちょうどよい妥協点」だったと言われています。
また、構図にも徹底して対称性を追求していて、キューブリックらしい演出が随所に見られます。
美術セットにも特徴があり、白いプラスチック製の男性器など、わずかに未来を感じさせるデザインが施されていました。
これは、当時流行していた「ポップエロティカ」と呼ばれる様式を取り入れたもので、作品の不気味な雰囲気づくりにも大きく貢献しています。
原作は、作家アンソニー・バージェスが1962年に発表した同名の小説です。
キューブリックは、基本的に原作に忠実な脚本を執筆しながらも、物語上の工夫や一部シーンの再構成を加えています。
彼自身、「小説に言いたいことはすべて書かれていたが、映画にするうえでいくつかの新しいアイデアを加えた」と語っています。
さらに興味深いのは、映画の脚本がアメリカで出版された省略版の小説をもとに作られた点です。
このため、映画とイギリス版の小説とでは結末が大きく異なっていて、作品の印象にも違いが生まれています。
映画「時計仕掛けのオレンジ」の見どころ
映像に宿るキューブリックの美学
「時計じかけのオレンジ」の魅力のひとつは、スタンリー・キューブリック監督ならではの映像表現です。
構図や色彩のすべてが緻密に計算されていて、観る者の視線を強く惹き付けます。
物語の舞台となる未来的な世界観を表現するため、白と赤を基調とした大胆な美術デザインが用いられています。
この中には、当時流行していた「ポップエロティカ」という美術様式の要素も取り入れられていて、少し先の未来を感じさせる空間が演出されています。
また、画面の縦横比には1.66対1という少し珍しい形式が採用されていて、シーンごとに左右対称の構図を多く用いることで、独特の美しさと緊張感を際立たせています。
音楽と映像の衝突が生み出す緊張感
この作品では、音楽の使い方にも強いこだわりが見られます。
とくに注目すべきは、クラシック音楽と暴力的な映像の対比です。
作中では、作曲家ウェンディ・カルロスによる電子音楽版の「女王メアリーのための葬送音楽」や、ベートーヴェンの「第九交響曲」などが使用されています。
とくに「歓喜の歌」は、主人公アレックスの人格と深く結びついていて、物語全体を象徴する重要な音楽として描かれています。
美しい旋律が残酷な場面と重なることで、観客に強い違和感と緊張感を与える演出が、本作の印象をより深いものにしています。
アレックスたちが話す謎の言葉「ナドサット」
物語の中でアレックスと仲間たちが話す言葉は、普通の英語ではありません。
彼らが使う「ナドサット」と呼ばれる言語は、ロシア語、英語、そしてロンドンの俗語などが混ざった、いわば若者たちの隠語のようなものです。
この独自の言語が映画全体に特有の雰囲気を与えていて、観客を非現実的な世界へと惹き込む役割を果たしています。
また、暴力的な台詞を距離のある表現に変えることで、直接的な残酷さをやや和らげる効果もあります。
主人公を演じたマルコム・マクダウェルの存在感
「時計じかけのオレンジ」を語るうえで欠かせないのが、主人公アレックスを演じたマルコム・マクダウェルの演技です。
彼が演じるアレックスは、冷酷な犯罪を繰り返す反社会的な若者でありながら、どこか不思議な魅力を放つ存在でもあります。
その二面性を見事に表現したマクダウェルの演技は、観る者に複雑な感情を抱かせるほどの説得力を持っています。
キューブリック監督が彼を起用した理由も、「if….」という映画で見せた演技力に強く惹かれたからだといわれています。
その選択は、本作の成功に大きく貢献しました。
映画「時計仕掛けのオレンジ」の考察とテーマ

自由意志と「管理された善」の対立
「時計じかけのオレンジ」が描く中心的なテーマのひとつが、「人間の自由意志」と「社会のコントロール」のぶつかり合いです。 主人公アレックスは、「ルドヴィコ療法」によって暴力をふるえない身体にされてしまいます。
一見すると更生したように見えますが、それは本人の意志ではなく、強制された変化です。
つまり、彼は「悪を選ぶ自由」すらも奪われてしまったのです。
映画はこう問いかけます。 「自らの意志で悪を選ぶ人間」と「善を強制されている人間」。
果たして、どちらが本当の意味で“人間らしい”存在なのでしょうか?
芸術と暴力のねじれた関係
アレックスがクラシック音楽、とくにベートーヴェンをこよなく愛している点も、本作の大きな特徴です。
彼にとって、音楽と暴力は切り離せない感情の源であり、どちらも“快楽”と結びついています。
暴力がまるで芸術のように描かれるこの作品では、人間の内面にある矛盾や、善悪の曖昧さが浮かび上がります。
そして、ルドヴィコ療法によって暴力への嫌悪感とともに音楽への嫌悪感も植え付けられる展開は、アレックスの“人格そのもの”が崩れていく様子を象徴しています。
社会や政治への鋭い風刺
キューブリック監督はこの作品を通して、現代社会が抱えるさまざまな問題にも切り込んでいます。
精神医療の在り方や、若者による犯罪、国家による強制的な矯正。
さらには、メディアの影響力や、政治による人間の管理など、鋭い風刺が随所に散りばめられています。
善意や秩序の名のもとに行われる人権の侵害。
この物語は、そんな“管理社会”への強い警鐘を鳴らしているのです。
映画「時計仕掛けのオレンジ」の評価と総評

1971年に公開された「時計じかけのオレンジ」は、当初から強い話題性を持った作品でした。
とくに暴力的な描写が注目を集め、観客の間では賛否が大きく分かれます。
イギリスでは、スタンリー・キューブリック自身が、脅迫や家族の安全を心配して上映中止に至ったという異例の経緯もありました。
その過激さゆえに批判も多かった一方で、深いテーマ性に注目する声も徐々に高まっていきます。
年月が経つにつれ、この作品は次第に再評価され、現在では「映画史に残る名作」のひとつとして確固たる地位を築いています。
たとえば、2012年に英国映画協会が行った「世界の偉大な映画」投票では、監督による投票で75位、批評家による投票で235位に選ばれました。
さらに、2020年にはアメリカの国立フィルム登録簿において、「文化的、歴史的、または美的に重要な作品」として登録されるなど、国際的にも高い評価を受けています。
この作品がここまで高く評価される理由のひとつに、キューブリック監督の完璧主義による映像演出があります。
一つひとつの構図、色彩、カメラワークに至るまで徹底的に練られていて、視覚的なインパクトも非常に強いものとなっています。
また、主人公アレックスを演じたマルコム・マクダウェルの存在感も特筆すべき点です。
残酷でありながら魅力的という難しい役柄を見事に演じきり、観客の心に強烈な印象を残しました。
そして何よりも、本作が問いかける「自由意志とは何か?」「人間の本質とは何か?」といった根源的なテーマは、時代が変わっても色あせることがありません。
表面的には暴力的で衝撃的な作品でありながら、その奥にある深い哲学的な問いは、今もなお多くの人々に考えるきっかけを与えています。
映画「時計仕掛けのオレンジ」のオススメの視聴者

「時計じかけのオレンジ」は、ただのエンターテインメントではなく、深いテーマ性と強烈な映像表現を持った作品です。
そのため、人によっては好みが分かれるかもしれません。 しかし、以下のような方には、とくにオススメできる映画です。
- 近未来や社会崩壊を描いた作品が好きな人
「ブレードランナー」や「1984」など、未来のディストピア(理想とは逆の社会)を描いた物語が好きな方には、世界観に強く惹かれるはずです。 - スタンリー・キューブリック監督の作品が好きな人
「2001年宇宙の旅」や「シャイニング」など、映像やテーマにこだわり抜いたキューブリック作品を観てきた方には必見の一本です。
彼の演出美学が随所に詰まっています。 - 社会問題や哲学的なテーマに関心がある人
自由とは何か、善とはどうあるべきか。
そんな問いを突きつけるような深いテーマを持つ作品に興味がある方に向いています。 - 映画史に残る重要な作品を観たい人
評価の高い名作を押さえておきたい映画ファンにとって、この作品は避けて通れません。
後世に影響を与えた一本として語り継がれています。
ただし、この作品には過激な暴力描写や性的な表現が含まれていて、人によっては強い不快感を覚える可能性があります。
そうした表現が苦手な方や未成年の方には適していません。
また、内容が非常に挑戦的であるため、テーマを批判的に捉え、作品全体を客観的に考察できる成熟した視聴者にこそオススメしたい映画です。
映画「時計仕掛けのオレンジ」の視聴方法や配信プラットフォーム

「時計仕掛けのオレンジ」は以下の配信サービスで視聴することができます。
- 定期配信動画
Amazonプライムビデオ/huluでは、映画「時計仕掛けのオレンジ」を追加料金なしで視聴することができます。 - レンタル・購入
hulu/TELASA/AppleTV+では、映画「時計仕掛けのオレンジ」をレンタルすることができます。
配信状況は時期によって変更される可能性があるため、最新情報は各プラットフォーム、またはJustWatchで確認してください。
JustWatchについては「JustWatchアプリの使い方と活用法」にて詳しく解説しています。
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映画「時計仕掛けのオレンジ」の関連情報

スタンリー・キューブリック監督による問題作「時計仕掛けのオレンジ」。
暴力と自由意思の本質を問うこの名作は、公開から半世紀を経た今も、観る者の心に強烈な印象を残します。
ここでは、映画をより深く味わうための関連情報をご紹介します。
時計じかけのオレンジ
2011年1月2日〜30日に赤坂ACTシアターで上演された舞台版「時計じかけのオレンジ」。
主演を務めたのは小栗旬さんで、舞台は「パンク・オペラ」としてアレンジされ、独特な世界観が再構築されました。
パンクオペラ「時計じかけのオレンジ」稽古披露!!
舞台の稽古でのオープニングシーンの公開映像です。
出演者の熱量や独特な演出が垣間見える映像となっており、公演にかける意気込みが伝わってきます。
時計じかけのオレンジ 製作40周年記念エディション(初回限定生産) [Blu-ray]
キューブリック監督による映画本編と、貴重な特別映像を多数収録した2枚組の豪華版。
日本語字幕付きで、当時の製作秘話や関係者インタビューなども堪能できます。
時計仕掛けのオレンジ 舞台パンフレット 小栗旬 芸能 舞台 最終
2011年公演の際に販売された舞台パンフレットです。
出演者インタビューや公演の見どころなどが凝縮された一冊となっています。
時計仕掛けのオレンジ フラッグ
作品の象徴的なビジュアルがデザインされたフラッグです。
お部屋のアクセントやコレクションとしてオススメです。
時計じかけのオレンジ アレックス 12インチ フィギュア A Clockwork Orange ALEX 12″ Figure MEZCO
ファン垂涎のリアルな造形によるフィギュアです。
主人公アレックスの不気味な微笑みや象徴的な衣装、さらには取り外し可能なマスクとナイフ内蔵の杖まで細部にこだわった一品。
「時計じかけのオレンジ」は、映画だけでなく舞台やグッズといったさまざまな形でその世界観が拡張されています。
小栗旬さん主演の舞台版をきっかけに作品の魅力を再発見するも良し、豪華特典付きBlu-rayで名作をじっくり味わうも良し。
この機会に、あなたも「時計じかけのオレンジ」の狂気と美に触れてみてはいかがでしょうか?
映画「時計仕掛けのオレンジ」の類似作品の紹介

「時計じかけのオレンジ」の独特な世界観や深い社会批評に共鳴した方には、次のような作品もオススメです。
これらの映画は、社会の矛盾や個人の自由、暴力と芸術の関係など、さまざまなテーマを描いています。
- ブラジル(1985年)
テリー・ギリアム監督が手がけた作品で、未来の歪んだ社会を描いています。
政府や技術の暴走が引き起こす問題をテーマに、主人公が現実逃避を図る様子が共通しています。 - アメリカン・サイコ(2000年)
メアリー・ハロン監督による作品で、表面上は成功したビジネスマンながら内面には暗い闇を抱える主人公が登場します。
社会的な期待と内面の虚無感が暴力に繋がるという点で、「時計じかけのオレンジ」と通じる部分があります。 - ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994年)
オリバー・ストーン監督の手による、連続殺人犯のカップルを描いた作品です。
暴力とメディアの関係性を鋭く批判し、社会が暴力をどのように受け止めるかを問いかけています。 - ザ・ロブスター(2015年)
ヨルゴス・ランシモス監督が描く、恋愛が義務付けられる不思議なディストピア社会が舞台です。
現代の人間関係や社会的な期待に対する風刺が、「時計じかけのオレンジ」と似た視点で表現されています。
これらの作品は、どれも「時計じかけのオレンジ」と同様に、単なる娯楽を超えた深いメッセージや社会への批判が込められています。
ぜひ、それぞれの作品に触れ、異なる視点から現代社会について考えてみてください。
映画「時計仕掛けのオレンジ」のよくある質問

- タイトルの「時計じかけのオレンジ」とは、どんな意味ですか?
- この言葉は、もともとイギリス・ロンドンの古い言い回しで、「自然なもの(オレンジ)を、人工的・機械的な仕組み(時計仕掛け)で動かす」という意味合いがあります。
つまり、人間らしさや自由な意志を、無理やり機械のように制御しようとすることを皮肉っているのです。
まさに本作のテーマそのものを象徴する表現です。
- イギリスで上映禁止になったというのは本当ですか?
- はい、事実です。1972年に上映が開始された後、監督キューブリック本人の意向によりイギリスでの上映が中止され、1999年に彼が亡くなるまで続きました。
これは作品に影響されたとされる事件や、監督自身や家族への脅迫があったことが背景にあります。
- 「ルドヴィコ療法」は本当にあるのですか?
- 作中で描かれる「ルドヴィコ療法」は架空の手法です。
ただし、実在する「嫌悪療法(きらいにさせる治療)」という心理療法をもとに考えられています。
映画のような極端なやり方は実際には行われていません。
- 映画と原作小説の違いは何ですか?
- 最も大きな違いは結末です。
映画はアメリカで出版された短縮版の小説をもとにしていて、原作の最後の章が省かれています。
原作では、主人公アレックスが自分の意志で暴力から離れ、大人へと成長していく姿が描かれています。
しかし、監督キューブリックはその部分を映画に取り入れない選択をしました。
- アレックスの目を無理やり開かせる場面は、どうやって撮ったのですか?
- あの印象的なシーンは、実際に眼科医が立ち会って撮影されました。
目が乾かないように麻酔の目薬が使われていましたが、長時間の撮影によりマルコム・マクダウェルの角膜が傷つき、一時的に視力を失ってしまったそうです。
非常に過酷な撮影だったことがうかがえます。
まとめ
スタンリー・キューブリック監督による「時計じかけのオレンジ」は、1971年の公開以来、その衝撃的な内容と映像美で映画史に深い影響を与えてきました。
原作はアンソニー・バージェスによる同名小説。
近未来の荒れた社会を舞台に、人間の自由意志と社会の支配という難題に真正面から挑んだ作品です。
この映画の見どころや特徴を、改めて整理してみましょう。
- マルコム・マクダウェルによる強烈な演技と、キューブリック監督の緻密な映像演出が融合し、強い印象を残す芸術作品となっている
- 「自由意志」と「社会による制御」という普遍的なテーマを扱い、観る者に深い問いを投げかけてくる
- 公開当初は賛否を呼びましたが、時が経つにつれ再評価され、映画史に残る傑作として位置づけられている
- ベートーヴェンをはじめとするクラシック音楽を効果的に使い、暴力と芸術の共存という複雑なテーマを際立たせている
- アレックスたちが話す造語「ナドサット」によって、現実と距離を取った独特な世界観が生み出されている
暴力的な表現が多く含まれてはいるものの、だからこそ見えてくる人間の本性や、社会と個人の関係。
「時計じかけのオレンジ」は、観る者に問いを投げかける“哲学的な映画”です。
半世紀以上が経った今でも、その問いかけは古びることなく、私たちの心に強く響きます。
一度観ただけでは終わらない。 繰り返し向き合うことで、新たな発見と気づきをもたらしてくれる作品といえるでしょう。
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