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漫画「ヒストリエ」の作品情報と感想

漫画「ヒストリエ」の作品情報と感想

岩明均先生といえば「寄生獣」で知られる人気漫画家ですが、「ヒストリエ」は漫画家としてデビューする前から温めており、実際にデビュー後の連載で形になった壮大な構想です。

物語の舞台は、紀元前4世紀の古代ギリシア。
主人公は、アレクサンドロス大王の書記官として知られる実在の人物・エウメネスです。
歴史の教科書で名前を見かけたことはあっても、その生涯について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?

僕がこの作品を手に取ったのは、大ファンで何度も読み返した「寄生獣」の作者が描く歴史物という点に興味を抱いたからです。
読み進めるうちに、そこには英雄の活躍だけでなく、人間の知恵、策略、そして感情が複雑に絡み合う、奥深い世界が広がっていました。

この作品では、そんな謎多き人物・エウメネスの少年時代から、どのようにして歴史の表舞台に登場することになったのかを、岩明先生ならではの視点と緻密な筆致で描き出していきます。

この記事では、「ヒストリエ」がなぜ多くの読者の心をつかんで離さないのか?
そのあらすじや登場人物、そして作品の持つ深い魅力について、ネタバレを避けながらじっくりとご紹介していきます。

本の情報

本の情報
出版年月2004年10月21日(第1巻)
著者岩明 均(いわあき ひとし)
出版社名講談社
発行形態コミック(アフタヌーンKC)
巻数既刊12巻(2024年6月21日時点)
価格748円~880円(税込)※巻によって異なる

「ヒストリエ」のあらすじ

「ヒストリエ」は、古代ギリシアを舞台に、一人の青年の数奇な運命を描いた壮大な歴史物語です。

主人公は、エウメネスという名の聡明な青年。
彼は都市国家カルディアの有力者・ヒエロニュモスのもとで育ち、幼いころから書物を愛し、優れた教養と鋭い観察力を身につけていきます。

しかし、ある日スキタイ人奴隷の騒動をきっかけに養父ヒエロニュモスが側近に暗殺され、謀略の追及を続けるエウメネスに対し、敵対者が彼のスキタイ人(蛮族)の出自を暴露。
そのためエウメネスは奴隷の身分に落とされてしまいます。

ここから、エウメネスの波乱に満ちた旅が始まります。
売られた先々で過酷な環境に置かれながらも、彼は決して屈することなく、自らの知恵と現実を見据える力で生き抜いていきます。
たとえば、村が敵に襲われた場面では、地形や人々の心理を冷静に読み取り、巧妙な作戦で侵略者を撃退します。
このようにして、彼は持ち前の知略を武器に、次々と困難を乗り越えていくのです。

「ヒストリエ」は、自らの出自に苦しみながらも、その壁を乗り越え、やがて歴史の表舞台へと登場するまでの、青年エウメネスの成長を描いています。

ただの歴史漫画ではありません。
人間の知性、苦悩、そして決意が濃密に描かれた、読みごたえのある物語となっています。

「ヒストリエ」の登場人物紹介

「ヒストリエ」の登場人物紹介

エウメネス

本作の主人公であり、物語の中心を担う青年です。
都市国家カルディアで、ギリシア人の養子として何不自由なく育てられてきました。
しかしある日、自分の出自が「蛮族」と蔑まれるスキタイ人であることが敵対者によって暴露され、そのため奴隷の身分へと転落します。

それでもエウメネスは、常に冷静さを保ち、知識と観察力という武器を手に自らの運命を切り拓いていきます。
力ではなく、知恵で戦う彼は、状況を見極める力に優れ、常識にとらわれない発想で周囲の人々を動かしていきます。
過去や自分の出自に葛藤を抱えながらも、やがて歴史の渦の中に飛び込んでいく姿には、大きな魅力と人間的な深みがあります。

フィリッポス2世

マケドニア王国の王であり、アレクサンドロスの父として知られる人物です。
ギリシア世界の統一を目指し、その野望のもとで軍を強化し、各地への支配を拡大していきます。

表向きは豪快で人間味のある人物のように見えますが、実際は非常に計算高く、時に冷酷な判断も下す現実主義者です。
物語の序盤からその存在感は圧倒的で、彼が登場する場面には常に緊張感が漂います。
エウメネスの才能にいち早く気づき、彼を自らの勢力に取り込もうとする場面も見どころのひとつです。

アレクサンドロス

後に「アレクサンドロス大王」として世界史に名を刻むマケドニアの王子です。
父であるフィリッポス2世から多くを学び、若くして天賦のカリスマと軍事の才能を発揮していきます。

しかし、彼の魅力は単なる英雄ではないという点にあります。
母オリュンピアスとの強い結びつきや、父への複雑な感情など、人間的な内面の葛藤が丁寧に描かれています。
エウメネスとは奇妙な縁でつながり、物語の中で少しずつその関係性が変化していく様子にも注目したいところです。

「ヒストリエ」をネットで調べた他の読者の声

「ヒストリエ」をネットで調べた他の読者の声

「ヒストリエ」は、多くの読者から高い評価を受けている作品です。
インターネット上のレビューや感想を見てみると、さまざまな角度からその魅力が語られています。
とくに目立つのが、「歴史の知識がなくても楽しめる」という声です。

舞台は古代ギリシアという、ややなじみの薄い時代ではありますが、主人公エウメネスの知略に満ちた行動や、登場人物たちの複雑な人間関係が、読者を自然と物語の中へ惹き込んでいきます。
「主人公の名前はなかなか覚えにくいけれど、窮地を知恵で切り抜ける展開が痛快だった」といった意見もあり、堅苦しい歴史物というよりは、上質な読み物として受け入れられていることがうかがえます。

また、「岩明均先生が描く人物は、善悪の単純な構図にとどまらず、奥行きがある」といった感想も多く見られます。
アレクサンドロスが抱える内面の葛藤や、エウメネスの掴みどころのない性格など、キャラクターの多面性が物語に深みと緊張感を与えていると評価されています。

さらに、「先が気になって一気に読んでしまった」という感想も少なくありません。
ストーリーの展開が巧みに構成されていて、「1巻ではまだ全体像がつかめないが、読み進めるうちに伏線が回収されていくのが楽しい」といった声も寄せられています。

こうした感想からも、「ヒストリエ」がただの歴史漫画ではなく、物語としての完成度が非常に高いことがわかります。
何度も読み返したくなるような、深い満足感を与えてくれる作品だといえるでしょう。

「ヒストリエ」の評価と感想

「ヒストリエ」の評価と感想

「ヒストリエ」は、読み始めると止まらなくなるほどの面白さと、見事に練り上げられた構成力が際立つ作品です。
物語は史実を土台にしていますが、そこに岩明均先生の独創的な解釈と想像力が加わることで、唯一無二の魅力を放っています。

とくに注目すべきは、主人公エウメネスの人物描写です。
歴史的な資料が少ない彼をあえて主役に据えたことで、作者は自由な発想を活かし、内面の葛藤や成長を深く掘り下げています。
奴隷という過酷な境遇から、知恵と戦略だけを武器に道を切り拓いていく姿には、単なる英雄物語とは異なる重みと感動があります。

物語の見どころとしてまず挙げられるのが、知略を駆使したスリリングな展開です。
武力に頼らず、情報を集め、相手の心理を見抜き、状況を操っていく様子が丹念に描かれていて、読み手に知的な刺激を与えてくれます。

また、岩明先生ならではの静かな緊張感と、時折描かれる人間の狂気が物語に深みをもたらしています。
セリフに頼らず、登場人物の目線や仕草だけで感情を伝えるような演出も多く、読み進めるほどに登場人物の人間味が際立ちます。

一方で、読者によっては物語の展開がややゆるやかに感じられることもあります。
とくに、新刊の発行ペースが数年に一度と遅いため、続きが気になっても長く待たなければならない点は、悩ましいところです。

しかし、それだけ時間をかけて丁寧に練り上げられているからこそ、この作品ならではの重厚な世界観と深い描写が実現しているとも言えるでしょう。

なかでも印象的だったのは、エウメネスが自らの出自と向き合う場面です。
ギリシア人として育った彼が、実は「蛮族」とされるスキタイの血を引いていたことを知り、深く葛藤する描写は胸に残ります。
その揺れ動く心が、彼の行動や考え方に強く影響を与え、物語全体に「自分とは何か?」という重いテーマを投げかけています。

「ヒストリエ」のオススメの読者層

「ヒストリエ」のオススメの読者層

「ヒストリエ」は、幅広い層に読まれている人気作ですが、とくに以下のような読者に強くオススメできます。

  • 知略で活躍する主人公が好きな方
    主人公エウメネスは、剣や暴力ではなく、知恵と観察力を武器に困難を乗り越えていきます。
    相手の心理を読み、状況を冷静に分析しながら策を練る姿は、まるで推理小説のようなスリルを感じさせてくれます。
    頭脳戦や心理戦に惹かれる方には、たまらない展開が続きます。
  • 人間ドラマや歴史物語が好きな方
    古代ギリシアを舞台にした壮大な歴史の中で、登場人物たちはそれぞれに葛藤を抱えながら生きています。
    単なる戦争や政治の物語ではなく、血の通った人物たちが織りなす濃密な人間関係が深く描かれている点が魅力です。
    史実に基づいたリアリティと、創作による奥行きのあるドラマが融合した世界観に惹き込まれることでしょう。
  • 「寄生獣」など岩明均先生の作品が好きな方
    岩明先生特有の静かで冷静な語り口と、人間の本質に迫るような視点は本作でも健在です。
    キャラクターの内に秘めた狂気や、表と裏の顔を持つ人物たちの描き方には独特の緊張感があります。
    これまでの作品に魅了された方であれば、きっと「ヒストリエ」でも深い満足感が得られるはずです。

これらに当てはまる方は、ぜひ一度「ヒストリエ」の世界を覗いてみてください。
きっと、静かな知的興奮と、心に残る深い物語が待っているはずです。

「ヒストリエ」を読んだ方にオススメの類似漫画の紹介

「ヒストリエ」を読んだ方にオススメの類似漫画の紹介

「ヒストリエ」に惹かれた方は、知略や人間ドラマ、古代の舞台背景などに魅力を感じたのではないでしょうか?
そんな読者に向けて、同じように歴史の奥深さと人間の知恵を描いた作品を厳選してご紹介します。

  • 「アド・アストラ -スキピオとハンニバル-」(作:カガノミハチ/2011年~)
    古代ローマとカルタゴが激突した第二次ポエニ戦争を舞台に、天才戦術家ハンニバル・バルカと、それに立ち向かうスキピオの一騎打ちを描く作品です。
    戦略・政治・信念が交錯する歴史劇であり、「ヒストリエ」と同様に、古代世界を生き抜く人物たちの知略と葛藤が緻密に描かれています。史実に忠実ながらも緊張感あふれる構成で、読み応えは抜群です。
  • 「ヘウレーカ」(作:岩明均/2001年) 
    「ヒストリエ」と同じく岩明均先生による、シラクサ(古代ギリシア都市)を舞台にした読み切り作品です。
    スパルタの兵士として生きる主人公が、紀元前3世紀の動乱の中で運命に翻弄されながらも、生き延びるために知恵を巡らせていく姿が描かれます。
    緊張感のある心理描写と、抑制された筆致が印象的で、「ヒストリエ」に魅了された方ならとくに共感できる内容です。
  • 「チェーザレ 破壊の創造者」(作:惣領冬実/2005年~)
    舞台は15世紀ルネサンス期のイタリア。主人公チェーザレ・ボルジアを中心に、メディチ家やボルジア家といった実力者たちが繰り広げる宮廷政治を描いた作品です。
    アンジェロは、物語の重要な視点人物として登場します。
    主人公アンジェロが歴史の表舞台へと巻き込まれていく構図は「ヒストリエ」と共通していて、策略と駆け引きの応酬に惹き込まれること間違いなしです。

いずれも、歴史を舞台にした知的で重厚な作品ばかりです。
「ヒストリエ」で得た読書体験をさらに広げてくれる作品として、ぜひ手に取ってみてください。
古代から近世まで、歴史の奥深さと人間の強さを味わうことができるでしょう。

著者について

著者について

「ヒストリエ」の作者・岩明均(いわあき ひとし)先生は、1960年に東京都で生まれた漫画家です。
1985年にデビューし、代表作「寄生獣」によって一躍その名が知られるようになりました。

この作品では、第17回講談社漫画賞や第27回星雲賞コミック部門など、数々の賞を受賞し、高い評価を得ています。
岩明先生の作風は、冷静かつ客観的な視点で、人間の内面に潜む狂気や社会の歪みを鋭く描き出す点にあります。
登場人物の感情や行動を静かに見つめながら、読者の心に深く訴えかけるような演出が特徴です。
「ヒストリエ」は、そんな岩明先生が漫画家デビュー以前から構想を練り続けてきた、まさにライフワークといえる作品です。

この作品でも、第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞など、数々の名誉ある賞を受賞していて、その完成度の高さがうかがえます。
他にも、「七夕の国」(超能力をテーマにしたサスペンス)や、「ヘウレーカ」(古代シラクサを舞台とした歴史物)など、幅広い題材に挑戦していて、どの作品にも岩明先生ならではの深い洞察と重厚な物語性が込められています。

静かな語り口のなかにある鋭さと緊張感。
それが岩明均作品の最大の魅力といえるでしょう。

「ヒストリエ」のよくある質問

「ヒストリエ」のよくある質問
歴史に詳しくなくても楽しめますか?
まったく問題ありません。
「ヒストリエ」は、歴史の専門知識がなくても充分に楽しめる作品です。
物語は主人公エウメネスの視点から進行するため、読者は彼とともに古代ギリシアの世界を自然に体感していけます。
作中では、歴史的背景や重要な用語についても無理なく説明されているので、知識がなくても物語にしっかり入り込めます。
むしろ、「この作品をきっかけに古代史に興味を持った」という読者も多く見られます。
知識がなくても、読み進めるうちに自然と時代の流れがつかめてくるので、安心して読み始めてください。
物語は完結していますか?新刊はいつ出ますか?
まだ完結していませんが、最新刊は2024年6月に発売されました。
現在、「ヒストリエ」は連載中の作品で、物語は完結していません。2024年6月には、約5年ぶりとなる最新12巻が発売され、大きな話題を呼びました。
ただし、連載ペースは非常にゆっくりとしていて、次の巻が出るまでには長い時間がかかる可能性があります。
それでも、一話一話の密度は非常に高く、読み応えは十分です。
まずは、これまで刊行されている12巻までをじっくりと読み進めてみてください。
気長に待ちながら、物語の世界観を何度も味わう楽しみ方もオススメです。

まとめ

この記事では、岩明均先生による歴史漫画「ヒストリエ」について、あらすじ・登場人物・読者の声などを交えながら、その魅力を詳しくご紹介しました。
最後に、改めて本作の魅力を振り返っておきましょう。

  • 奴隷という過酷な出自から、知恵と策略で運命を切り拓く主人公エウメネス
  • 善悪では割り切れない人物たちによる、重厚で人間味あふれるドラマ
  • 武力ではなく知略で勝負する、緊張感あふれるスリリングな展開
  • 数々の漫画賞を受賞し、多くの読者から高い評価を得る完成度

「ヒストリエ」は、ただの歴史物語ではありません。

人間の知性とは何か、運命にどう立ち向かうべきか?
そんな普遍的なテーマを内包した、奥深い作品です。

心に残る物語を読みたい方、歴史の中で生きる人物たちの葛藤に触れたい方に、とくにオススメしたい一冊です。
まだ読んだことがないという方は、ぜひこの機会に「ヒストリエ」の世界へ足を踏み入れてみてください。
きっと、あなたの心に何かを残してくれることでしょう。