田坂広志氏の著書「死は存在しない 最先端量子科学が示す新たな仮説」は、「死とは何か」という深遠な問いに、最先端の科学の視点から迫る一冊です。
これまで「死後の世界」は宗教や哲学の分野で語られることが多く、科学の立場では否定的に捉えられてきました。
しかし本書では、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」と呼ばれる量子科学の概念を通じて、死は終わりではなく、私たちの意識がより大きな存在へと戻っていく過程だと示されています。
本書は、死に対する不安を和らげてくれるだけでなく、私たちが生きている「今」という瞬間をどう捉えるかを改めて考えさせてくれます。
生きる意味を見つめ直し、人生をより深く味わうためのきっかけとなる一冊です。
この記事では、本書の概要や読者の感想、そして僕自身がとくに心を動かされたポイントについて、書評を交えながら丁寧にご紹介していきます。
本の情報

出版年月 | 2022年10月 |
著者/編集 | 田坂 広志 |
出版社名 | 光文社 |
発行形態 | 新書 |
ページ数 | 357ページ |
価格 | 1,012円(税込) |
ISBNコード | 9784334046309 |
目次
- 序 話 この本を手に取られた、あなたへ
- 第一話 あなたは、「死後の世界」を信じるか
- 第二話 現代の科学は「三つの限界」に直面している
- 第三話 誰もが日常的に体験している「不思議な出来事」
- 第四話 筆者の人生で与えられた「不思議な体験」
- 第五話 なぜ、人生で「不思議な出来事」が起こるのか
- 第六話 なぜ、我々の意識は「フィールド」と繋がるのか
- 第七話 フィールド仮説が説明する「意識の不思議な現象」
- 第八話 フィールド仮説によれば「死後」に何が起こるのか
- 第九話 フィールド内で我々の「自我」(エゴ)は消えていく
- 第一〇話 フィールドに移行した「我々の意識」は、どうなるのか
- 第一一話 死後、「我々の意識」は、どこまでも拡大していく
- 第一二話 あなたが「夢」から覚めるとき
- 終 話 二一世紀、「科学」と「宗教」は一つになる
本の概要

本書「死は存在しない」は、章ごとに少しずつ読者を深い思索へと導いていく構成になっています。
冒頭では、著者が想定する6つのタイプの読者に向けて語りかけがあり、「死」に対する共通の問題意識をそっと共有してくれます。
第一話から第二話では、多くの人が抱いている「死後の世界」へのイメージや、現代科学が陥っている三つの限界を取り上げながら、既存の価値観を揺さぶる問いかけがなされます。
続く第三話から第七話では、「偶然の一致」や「予感」といった日常でも起こりうる不思議な出来事を紹介し、それがなぜ起こるのかを、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」と呼ばれる考え方を通して解き明かしていきます。
そして第八話以降は、この仮説に基づいた「死後の世界」の展開へと進みます。
意識や自我がどうなるのか?
肉体が消えたあとに何が起こるのか?
そうした根本的な問いに対する著者の考察が丁寧に描かれます。
最終章では、これまで相いれないものとされてきた「科学」と「宗教」のあいだに、新たな橋が架けられる可能性を示し、壮大な視野で読者の心を締めくくります。
本書の大きなテーマは、「死」と「その先にある意識の行方」です。
著者はこの難題に対し、最先端の量子科学の知見をもとに、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」という新たな切り口から挑みます。
本書が目指しているのは、これまで真っ向から対立していた「科学」と「宗教」の間に、対話の道をつくることです。
もしこの仮説が正しいのであれば、死は単なる終わりではなく、私たちの意識は「宇宙意識」とも呼べる場に還っていくという、壮大な帰還の旅なのかもしれません。
著者は、こうした考え方によって、死への不安が和らぎ、読者が今という時間をより前向きに、そして深く生きるための手助けになればと願っています。
それが、本書の根底にある想いであり、伝えたいメッセージです。
「死は存在しない」をネットで調べた他の読者の声

「死は存在しない」は、発売以来、多くの読者の関心を集め、インターネット上ではさまざまな感想や評価が寄せられています。
その中でも、好意的な声は少なくありません。
たとえば、「久しぶりに心から読み応えを感じた本だった」「この本に書かれていることが本当なら、これまで理解できなかった不思議な出来事にも説明がつく」といった意見があります。
また、「死が恐ろしいものではないと思えるようになり、自然と生きていることへの感謝が湧いてきた」「読み終えた後、気持ちが穏やかになった」といった、内面の変化を語る読者も多く見られます。
なかには、「まるで美しい神話や叙事詩を読んだかのような感覚で本を閉じた」という感想もあり、本書が科学的な内容にとどまらず、読者の心情にも深く響いていることが伝わってきます。
さらに、「この世界観は、まるでアニメ「エヴァンゲリオン」の人類補完計画を思い出した」と、独自の視点から本書の世界観を重ねる声もありました。
一方で、批判的な意見も一定数存在します。
「この手のテーマの本は何十冊と読んできたが、内容は期待外れだった」「ゼロ・ポイント・フィールド自体は、目新しい考え方ではない」といった、既に類似の知識を持つ読者からの厳しい評価もあります。
また、「著者の述べる仮説は、ユングの集合的無意識と同じような考えに感じた」という指摘もありました。
本書では「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を土台に論が展開されているため、「あくまでその仮説ありきの世界を描いているだけで、科学的とは言い難い」という受け止め方をする読者もいます。
こうした賛否両論が集まるのは、それだけ本書が多くの人に問いかけを与え、思考を刺激する作品であるからこそ。
読む人の視点や経験によって、まったく異なる感想が生まれるという点においても、本書の持つ奥深さがうかがえます。
「死は存在しない」の評価と書評

「死は存在しない」という書籍は、多くの示唆に富む内容を含みながらも、その核心部分にはいくつか考えさせられる論点が存在します。
まず、この本の魅力のひとつは、著者が原子力工学の博士でありながら、「死後の世界」という壮大なテーマに科学の視点から真正面から向き合っていることです。
とくに、難しくなりがちな量子科学の概念について、難解な用語を避け、映画の一場面や日常の出来事を例に挙げて平易に説明している点は、多くの読者にとって理解しやすく、大変評価されています。
そのため、理系に馴染みのない人でも、著者が提唱する世界観をすっと受け入れることができるようになっています。
また、「死とは終わりではなく、本来の場所への帰還である」という本書の考え方は、大切な人を失った悲しみや、自身の死への恐怖を抱える人にとって、大きな慰めとなり得ます。
科学と宗教という、これまで相いれないとされてきた二つの立場をつなげようとする著者の挑戦は、凝り固まった価値観をゆさぶり、物事を柔軟に見つめ直す機会を与えてくれます。
一方で注意すべき点もあります。
本書の論理展開はすべて、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」という、現時点では実証されていない考え方に基づいています。
著者はこの仮説を丁寧に解説していますが、あくまで仮説である以上、物的証拠を重んじる立場の人にとっては、主張が飛躍しすぎていると感じられるかもしれません。
また、「ユングの集合的無意識と似ている」といった声もあり、まったく新しい発想とは受け取られない側面も指摘されています。
そのため、この本は科学的な正しさを追求するものというより、「死とは何か」を見つめ直すためのひとつの考え方、あるいは心の糧として読むのが適しているのではないでしょうか?
とくに印象に残ったのは、「自我」についての説明でした。
著者は、自我とは生き延びるために必要な働きであり、肉体の死とともにその役割を終え、自然と消えていくものだと述べています。
自我が消えれば、「私」という意識の輪郭が薄れ、恐れや不安といった苦しみからも解き放たれるという考え方は、衝撃的でありながらも、どこか納得感がありました。
さらに、私たちの意識が壮大な宇宙の意識へと溶け込み、ひとつになるというイメージは、まるで叙事詩のようで、深い感動を覚えました。
僕自身、中学生の頃に魂がふわっと抜けて、天井から自分を見下ろすような体験をしたことがあります。
そのとき「上に行くとひとつになって、なんだかとても心地よさそうだ」と感じた記憶があり、「私たちの意識が壮大な宇宙の意識へと溶け込み、ひとつになる」というイメージは、どこか腑に落ちるものでした。
こうした体験が、本書が多くの読者に受け入れられている理由のひとつであることは間違いないでしょう。
「死は存在しない」のオススメの読者層

「死は存在しない」は、著者が冒頭で語っているように、特定の問いを抱えている人にこそ深く届く一冊です。
この本は、ただの思想書でも、難解な科学書でもありません。 生と死に向き合う場面で、何かしらのヒントや気づきを得たいと願う人に向けて書かれた、まさに「思索の道しるべ」といえる内容です。
以下のような方には、とくにオススメできます。
- ご自身や身近な人の病や老いを通じて「死」を意識するようになった方
死を単なる「終わり」や「消滅」と捉えるのではなく、意識が宇宙に還る「大いなる帰還」として捉え直すことで、不安が和らぎ、残された時間をより穏やかに過ごせる手助けとなります。 - 現代の科学や宗教に対して、どこかしっくりこない思いを抱えている方
科学一辺倒の説明に物足りなさを感じつつ、宗教の教義にも抵抗がある方にとって、本書はその間に架ける一本の橋となり得ます。
量子科学の視点から、対立していた二つの考えに融合の可能性を見出していきます。 - 不思議な体験の意味を知りたいと感じている方
予感や偶然の一致、以心伝心のような現象が起こったとき、それを「気のせい」と切り捨てず、何かの意味があるのではと感じたことがある方には、本書の視点が強く響くでしょう。
意識と情報のつながりを、量子の世界から解き明かそうとする内容です。 - 「死とは何か」「人生とは何か」といった根本的な問いを考えたい方
生きる意味、自分の存在の位置づけについて思いを巡らせている方にとって、この本は日常の悩みを相対化し、大きな視野で人生を見つめ直す契機になります。
私たちの命が、宇宙の流れの中にあるひとつの役割だという見方は、きっと新しい視座を与えてくれるはずです。
これらのどれかひとつでも当てはまる方には、「死は存在しない」を一度手に取ってみることをオススメします。
読むことで、これまで漠然としていた不安や疑問が、少しずつ言葉になっていく感覚を味わえるかもしれません。
「死は存在しない」の類似作品の紹介

死は存在しない」を読んで心に響いた方には、同じように人生や死に向き合う視点を深められる以下の書籍もオススメです。
どれも、死というテーマをより広い視点から考える手がかりとなる作品ばかりです。
- 「すべては導かれている~逆境を越え、人生を拓く五つの覚悟~」田坂広志 著
著者自身による別の著作で、人生に訪れる逆境や困難を、あらかじめ意味のある出来事として受け止めるための考え方を示しています。
「死は存在しない」が「死」を肯定的に捉える一方で、こちらの作品では日常の問題に向き合うための実践的な視座を与えてくれます。
宇宙的な視野から、より地に足のついた生き方へとつなげていきたい方にオススメです。 - 「臨死体験」立花隆 著(文春文庫)
世界各国の臨死体験を丹念に調べ上げた、報道記者による渾身の記録です。
科学、医療、宗教といったさまざまな立場から「死後の世界」に迫り、「死は存在しない」とは異なる角度からの問いかけを読者に与えてくれます。
ひとつの仮説だけにとどまらず、多角的に死を考えたい方にとって、示唆に富んだ内容です。 - 「自分であり続けるために」田坂広志 著
変化が激しい現代において、自分らしさを失わずに生き抜くにはどうすればよいのかを、哲学的かつ実践的に説いた一冊です。
「死は存在しない」で得た広い視点を、日々の行動や仕事にどう活かしていくかを考える上で、大きな助けとなるでしょう。
どの作品も、人生を深く見つめ直すきっかけを与えてくれます。
「死は存在しない」で感じた気づきや問いをさらに広げたい方は、ぜひ手に取ってみてください。
著者について

「死は存在しない」の著者である田坂広志氏は、科学者でありながら経営や思想の分野でも深い知見を持つ、まさに多才な人物です。
1951年生まれ。東京大学大学院では原子力工学を専攻し、博士号を取得しました。
大学院修了後は三菱金属(現在の三菱マテリアル)に入社し、原子力関連の業務に携わるなど、実務に裏打ちされた科学の世界でキャリアを積み重ねてきました。
その後、平成2年には日本総合研究所の設立に参画し、取締役として経済・社会政策に関する提言を行う立場に就きます。
さらに平成12年には多摩大学大学院の教授として教壇に立ち、社会起業家の育成にも取り組むようになります。
同年、自ら立ち上げたシンクタンク「ソフィアバンク」では、社会の変革に向けた提案や啓発活動を続けてきました。
平成23年、東日本大震災と福島第一原発事故が発生した際には、政府の要請を受けて内閣官房参与に就任。
専門家として原子力政策の転換や事故対応に尽力しました。
現在では、全国の経営者や指導者が集う私塾「田坂塾」を主宰し、志あるリーダーたちの育成にも力を注いでいます。
著書は100冊を超え、「運気を磨く」「知性を磨く」「プロフェッショナル進化論」など、ビジネス、哲学、自己啓発と幅広い分野にわたります。
科学的な厳密さと精神世界への洞察を兼ね備えた田坂氏だからこそ、『死は存在しない』のような、学問や思想の枠を超えた大きな視点で物事をとらえる作品が生まれたのだといえるでしょう。
「死は存在しない」のよくある質問

- この本は科学の本ですか? それとも精神的な内容ですか?
- 本書は、最先端の量子科学のひとつである「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を軸に展開されています。
ただし、この仮説はまだ科学的に完全に立証されたものではなく、現時点ではあくまで考察のひとつです。
そのため、内容は科学と哲学、さらには精神的な世界観を含むものとして理解するのが適切です。
著者自身も、これまで対立してきた「科学」と「宗教」を切り離すのではなく、両者をつなげ、新しい見方を生み出すことを目指しています。
- 「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」とは何ですか?
- この仮説では、宇宙が生まれる前から存在している「量子の空(から)」のような領域に、あらゆる情報が記録されていると考えられています。
そこには、宇宙の出来事だけでなく、私たちの思考や感情、記憶までが保存されているとされます。
まるで立体映像のようにすべてが映し出されるという発想は、科学と精神世界をつなぐ手がかりにもなっています。
本書では、私たちが亡くなった後、この情報の場へと意識が還り、個人の存在を超えて宇宙と一体になるという見解が示されています。
- この本を読むと、死に対する不安がなくなりますか?
- 実際に読んだ方の感想には、「死への恐れが軽くなった」「心が落ち着いた」といった声が多く見られます。
本書は、死を「終わり」や「消滅」とするのではなく、意識が本来の場所に戻る「帰還」として捉え直します。
この考え方によって、死に対する印象がやわらぎ、安らぎや希望を感じる方もいるようです。
ただし、感じ方は人それぞれです。本書に書かれていることをどう受け止めるかは、読む方の人生経験や価値観によって異なります。
あくまでひとつの視点として、心に留めておくのがよいでしょう。
まとめ
田坂広志氏による「死は存在しない」は、人類が長く抱き続けてきた「死とは何か」という根本的な問いに対し、量子科学の視点から挑んだ意欲的な一冊です。
この本が伝える死生観は、私たちの意識を大きく揺さぶり、これまでとは異なる人生の捉え方をもたらしてくれます。
本書の特徴を整理すると、次のような点が挙げられます。
- 「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」という量子科学の考え方をもとに、死後も意識が消えることなく、宇宙の情報場に存在し続けるという壮大な世界観が語られている。
- 科学が否定し、宗教が肯定してきた「死後の世界」について、両者の橋渡しとなるような新しい視点を提示している。
- 死を「終わり」ではなく「本来の場所への帰還」として捉えることで、不安や恐怖を和らげ、生きることへの肯定的な感覚を取り戻す助けとなる。
- 仮説に基づくため、厳密な証明を求める読者には物足りなさを感じる可能性もあるが、それを補って余りある思索の広がりがある。
この本は、ただ死の意味を問うのではなく、「生きるとはどういうことか?」をあらためて考える機会を与えてくれます。
人生の節目にいる方、自分の死生観を見つめ直したい方にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
読後には、きっと心の奥に温かな静けさが広がるはずです。